「定期的に歯石を取ってもらっているのに、すぐにまた溜まってしまう・・・」
こんなお悩みを抱えている方は少なくありません。
実は歯石がつきやすい人には、いくつかの共通した特徴があります。唾液の性質や日々の習慣が、歯石の形成に大きく関わっているのです。
今回は、歯科医の視点から歯石ができやすい人の特徴と、その予防法について詳しくお伝えします。
歯石ができる仕組みを理解しましょう
歯石がどのようにして形成されるのか、まずはその仕組みを知っておくことが大切です。
歯石は、磨き残しによってたまった**歯垢(プラーク)**が、唾液に含まれるカルシウムやリン酸などのミネラル成分と結びつき、リン酸カルシウムの結晶を形成することで沈着していきます。
歯垢は細菌のかたまりで、1gあたり1000億個もの細菌が集まっています。この歯垢が唾液のミネラル成分によって石灰化し、わずか2日ほどで歯石の形成が始まり、2週間ほどで硬くかたまってしまうのです。
歯石には2つのタイプがあります。
歯ぐきより上の見える位置についている「歯肉縁上歯石」は、灰白色をしており比較的除去しやすい特徴があります。一方、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)の見えない部分についている「歯肉縁下歯石」は、褐色や黒っぽい色をしており、除去が難しく痛みを伴うこともあります。
歯石の表面はザラザラしているため、その上にまた歯垢が付着しやすくなります。そして付着した歯垢がまた再石灰化するという悪循環を繰り返すことで、歯石がどんどん溜まっていくのです。

歯周病の初期症状は気づきにくい?見逃されやすいサインを解説
歯周病は初期段階では自覚症状が少なく、気づかないうちに進行してしまうことがあります。本記事では、見逃されやすい初期症状や注意すべきサイン、早期発見のポイントについてわかりやすく解説します。
歯石がつきやすい人の5つの特徴
歯石ができやすい人には、いくつかの共通した特徴があります。
ここでは、特に重要な5つの要因について詳しく見ていきましょう。
1. 唾液がアルカリ性に近い
唾液の性質は、歯石の形成に大きく影響します。
唾液がアルカリ性に近い人は、ミネラル成分を多く含んでいるため、歯石がつきやすい傾向にあります。唾液が多く、サラサラしていて、PHが高い(アルカリ性である)という特徴を持つ方は、歯石が溜まりやすいのです。
ただし、アルカリ性に近い唾液には大きなメリットもあります。虫歯菌によって作り出される酸をアルカリ性で中和し、酸で溶けてしまった歯を修復する「再石灰化」の力が強いため、虫歯になりにくいという利点があるのです。
そのため、昔から自分の歯が丈夫で虫歯に悩まされることが少ない人は、実は歯石が溜まりやすいタイプかもしれません。

2. 歯磨きが不十分
毎食後の歯磨きができていない人や、歯磨きが不十分な人は、口の中にプラークが溜まってしまい歯石がつきます。
歯ブラシのみで落とせる汚れは6割程度です。
そのため、歯ブラシが届きにくい場所である歯と歯の間や根元、上の奥歯などにプラークが溜まりやすくなります。歯間ブラシ、デンタルフロスやタフトブラシを併用している場合は、歯ブラシが届かない部分の清掃が可能ですが、歯ブラシのみで歯磨きしている人は、歯石がつくリスクが高まります。
3. 口が渇いている(口呼吸の習慣)
口が渇いている人は、唾液の分泌量が少ないことが考えられます。
唾液には口の中の汚れを洗い流す自浄作用があるので、唾液が少ないと汚れが口の中に残るため歯石がつきやすくなります。唾液の分泌量は、ストレス、疲れ、緊張、加齢や薬の副作用などによっても減少します。
また、日頃から水分の摂取量が少ない人や口呼吸が癖になっている人も口が渇きます。口呼吸は口腔内を乾燥させるだけでなく、細菌の繁殖を促進してしまうため、歯石形成のリスクを高めてしまうのです。
4. たばこを吸っている
たばこを吸うとタール(ヤニ)が原因で歯石が歯に付着します。
歯に付着したヤニはベタベタと粘着性があり、プラークが付着しやすい状態を作るためです。ヤニは日常的な歯磨きでは除去できず、蓄積されて細菌の温床になるので、たばこを吸っていない人と比較して歯石が付きやすい口腔内環境であると言えます。
5. 歯並びが悪い
歯並びが悪い人は歯磨きが難しくプラークが残りやすいため、歯並びが良い人に比べて歯石がつきやすい傾向にあります。
歯が重なっている部分は、歯ブラシ以外にも歯間ブラシやデンタルフロス、タフトブラシなどを併用しても汚れの除去が難しいためです。凸凹の歯並びは歯ブラシが当たりにくく、1歯ずつ縦に動かして丁寧に汚れを落とす必要があります。

歯石が特につきやすい場所
お口の中でも、特に歯石が溜まりやすい場所があります。
これらの場所を重点的にケアすることが、歯石予防の第一歩です。
下の前歯の裏側
下あごの前歯の裏側には唾液腺の開口部があり、唾液が出るところです。
唾液は石灰化作用があるので、ここに歯垢が溜まっていると固まって歯石になりやすいのです。舌で触ったときにザラザラした感触がある場合は、すでに歯石が形成されている可能性が高いでしょう。
歯医者さんで歯石除去してもらったときは歯と歯のすき間の感覚があってすっきりした気分だったのに、数か月後にはすき間がなくなっているという経験をされた方も多いのではないでしょうか。
上の奥歯の表側(頬側)
意外に感じられるかもしれませんが、上あごの奥歯は頬側、表側のほうが歯石がつきやすいのです。
実は、唾液腺の開口部がここにもあります。そして、上あごの奥歯は歯ブラシがどうしても届きづらいところで、磨き残しが多いところでもあります。まさに、歯石をつくるのには絶好の場所というわけです。
意識して磨いていても、歯ブラシの毛先が届いていなければ、磨き残しゼロというのは難しいですよね。
出血している部分
唾液や浸出液の作用で石灰化して歯石ができますが、血液にも石灰化の作用があります。
食べ物での傷や歯周病などで出血しているところがあれば、その周辺も歯石が溜まりやすいので気を付けましょう。ただし、出血している部分を磨こうとすると痛みもありますし、傷をさらに傷つけてしまうことになるのでゴシゴシと磨くことはやめましょう。
歯石を放置するとどうなるのか
「たかが歯石」と軽く考えてはいけません。
歯石を放置すると、さまざまな口内トラブルを引き起こす可能性があります。

歯周病のリスクが高まる
歯石が溜まりやすい人は、虫歯にかかりにくい傾向があるため、長年歯のトラブルがなく歯医者にあまり行ったことがないという人が多いものです。
しかし、このような人は虫歯にはかからなくても、溜まった歯石が原因で**歯周病にかかりやすく、重症化しやすいリスク**があるのでくれぐれも注意しましょう。
歯周病は初期にはほとんど症状を出さず、ある程度ひどくなってからじわじわと症状を出してきます。自分でもはっきりとわかるくらいの症状が出る頃には、すでに歯を支えている骨がほとんどなくなっていて、抜歯するしかないという状態になっていることも珍しくありません。
日本人の歯を失う最大の原因は虫歯ではなく、この歯周病なのです。
全身の健康への影響
歯周病になると歯茎から出血するのですが、出血は細菌や細菌が作る毒素を全身に行き渡らせてしまうということにもなります。
現在では様々な病気や疾患と歯周病の関係がわかってきています。たとえば、糖尿病は歯周病の合併症とまで言われているのです。脳卒中、肺炎、心臓病、低体重児出産・早産など、全身の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
口臭の原因になる
歯石が着いていると歯の表面がザラザラしてくるため、さらに汚れがつきやすくなります。
歯に歯石が着くと周りの歯ぐきが腫れ、歯ぐきから出る血液や滲出液によって口臭が出やすくなります。また、歯と歯ぐきの境目の歯周ポケットに歯石がたまると、歯ぐきが腫れて膿が出てくることもあり口臭の原因となります。
歯石を予防するための具体的な方法
歯石は一度形成されると自分では取り除くことができません。
だからこそ、歯石になる前の予防が何よりも大切です。
毎日の丁寧なブラッシング
歯石予防の基本は、毎日の丁寧な歯磨きです。
歯垢は歯ブラシで丁寧に磨くと落とすことができますが、歯石に変わると自分では落とすことができません。毎食後に歯磨きをして、汚れを落とすことをおすすめしています。
特に歯と歯ぐきの境目は歯ブラシを45度に当てて細かく動かしましょう。凸凹の歯並びは歯ブラシが当たりにくく、1歯ずつ縦に動かして汚れを落とすことが大切です。

歯間清掃用具の活用
歯ブラシだけでは、歯と歯の間や歯の根元の汚れを完全に除去することはできません。
デンタルフロスや歯間ブラシ、タフトブラシなどの補助的な清掃用具を併用することで、歯ブラシが届かない部分の清掃が可能になります。歯と歯の間は虫歯ができやすい部分でもあるので、デンタルフロスを通して汚れを丁寧に落とすことが大切です。
生活習慣の見直し
口呼吸の習慣がある方は、意識して鼻呼吸に変えていくことが大切です。
また、水分をこまめに摂取して口腔内の乾燥を防ぐことも効果的です。たばこを吸っている方は、禁煙を検討することで歯石だけでなく歯周病のリスクも大きく減らすことができます。
プロフェッショナルケアの重要性
どんなに丁寧にセルフケアをしていても、完全にプラークを取り除くことは難しいものです。
だからこそ、定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアが不可欠なのです。
定期的な歯石除去(スケーリング)
歯石の段階になると歯磨きでも落とすことができず、歯医者で除去する必要があります。
そのため、予防をするためには歯石ができてから取り除くのではなく、歯石になる前のヌルヌルしたバイオフィルムの段階で清掃することが大切です。定期的に歯科医院に通って除去することをおすすめします。
当院では、日本歯周病学会による歯周病治療ガイドラインに沿った歯周病治療を行っています。ブラッシング指導、スケーリング、ルートプレーニング、必要に応じて歯肉剥離掻把術(FOP)などの治療方法を提供しています。
PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)
PMTCでは、お口のプロである歯科衛生士によるプロフェッショナルクリーニングを行います。
毎日のブラッシングだけでは落としきれない汚れや着色を、専門器具を用いて清掃します。歯石の除去だけでなく、フッ素塗布によるむし歯予防効果も期待できます。
定期健診のメリット
定期健診を受けることによって、もしもむし歯や歯周病になってしまった場合でも初期の段階で治療を始められます。
早期発見で痛みも少なく、治療も最小限に抑えられます。年に数回、定期的に予防歯科を受診することでむし歯や歯周病を予防できれば、結果的に医療費の節約にも繋がります。

まとめ:歯石予防は毎日のケアと定期的な受診が鍵
歯石がつきやすい人には、唾液がアルカリ性に近い、歯磨きが不十分、口が渇いている、たばこを吸っている、歯並びが悪いという5つの特徴があります。
これらの特徴に当てはまる方は、特に注意が必要です。
歯石は放置すると歯周病を引き起こし、最悪の場合は歯を失うだけでなく、全身の健康にも影響を及ぼします。毎日の丁寧なブラッシングと歯間清掃用具の活用、そして定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアが、歯石予防の基本です。
虫歯があまりなく歯石が溜まりやすいという人は、できるだけこまめに歯科で定期的なクリーニングを受けることが大事です。小さなお子様からご年配の方まで幅広い世代の方に通っていただける歯医者を目指し、丁寧な対応を心がけています。
お口の健康を守るために、ぜひ一度ご相談ください。
詳しい診療内容や予防歯科については、阪東橋歯科クリニックまでお気軽にお問い合わせください。24時間ネット予約も可能です。
著者情報
阪東橋歯科クリニック 院長 瀧川 龍一

経歴
・日本大学中学校・高等学校 卒業
・日本大学松戸歯学部 卒業
・日本大学松戸歯学部臨床研修医 修了
・日本大学松戸歯学部顎口腔機能治療学講座 非常勤医員
・横浜市歯科医院にて副院長
・都内歯科医院にて分院長
・厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導医
所属
日本歯科補綴学会
クラ・ゼミ保育園 吉野町 園医
ララランド横浜伊勢佐木 園医









