鏡を見たとき、「歯が長くなったかも…」と感じたことはありませんか?
実はそれ、歯茎が下がっているサインかもしれません。
歯茎が下がると、見た目の印象が変わるだけでなく、知覚過敏や虫歯のリスクも高まります。多くの方が「加齢のせいだから仕方ない」と諦めてしまいがちですが、実際には様々な原因が絡み合って起こる現象なのです。
今回は、歯茎が下がる主な原因である歯周病や加齢との関係、そして意外と知られていない間違った歯磨き方法や噛み合わせの影響について、専門的な視点から詳しく解説します。効果的な予防法や対処法もご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

歯科定期検診の内容とは?チェックされる項目と受診時の流れを解説
歯科の定期検診では、虫歯や歯周病のチェックだけでなく、お口全体の状態を総合的に確認します。本記事では、定期検診で行われる主な内容やチェック項目、受診の流れについてわかりやすく解説します。
歯茎が下がるとは?専門的には「歯肉退縮」と呼ばれる現象
歯茎が下がる現象は、歯科医療の専門用語で「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」と呼ばれています。
これは、歯の周りの歯茎が減り、本来は歯茎に隠れているはずの歯根が見えてしまう状態を指します。歯はエナメル質という非常に硬い素材に覆われていますが、歯茎で隠れている歯の根っこ部分(歯根)は、セメント質というエナメル質に比較して刺激に弱い素材に覆われています。
そのため、歯茎が下がって歯根が露出すると、虫歯や知覚過敏(「しみる」「痛い」)、象牙質の色(茶色)が見えるなどの問題が生じやすくなります。
歯茎が下がることで起きやすい症状や見た目の問題をまとめると、以下のようになります。
- 歯が長く見える
- 歯と歯茎の境目に隙間を感じるようになる
- 歯に食べ物が挟まりやすくなる
- 歯に痛みが生じる・歯がしみる(知覚過敏)
- 歯周病や虫歯になるリスクが高まる
- むき出しになった歯根部が着色しやすい
これらの症状は、日常生活の質を大きく低下させる可能性があります。
特に知覚過敏は、冷たいものや熱いものを食べるたびに痛みを感じるため、食事の楽しみが減ってしまうこともあるのです。また、歯並びや咬み合わせの悪さ、歯と歯の隙間が目立ったり、口元の印象が変わったりするため、見た目の点でも悩ましい問題となります。

歯茎が下がる主な原因…加齢だけではない複合的な要因
「歯茎が下がるのは年齢のせい」と思われがちですが、実はそれだけではありません。
歯茎が下がる原因は複数あり、実際には複数の要因が絡み合って発生することがほとんどです。ここでは、主な原因を詳しく見ていきましょう。
歯周病(歯肉炎・歯周炎)…最も重要な原因
歯茎が下がる最も主要な原因は、**歯周病**です。
歯周病は口腔内細菌の一つである歯周病菌による感染症で、歯磨きや歯石除去などが不十分で、お口の中の清潔状態が悪いと発症します。まず歯肉が炎症を起こして腫れ、次第に歯周組織(歯槽骨や結合組織など)に炎症が広がっていきます。
歯肉や歯周組織が炎症で徐々に破壊されていき、歯茎が縮んでしまうというわけです。
日本の成人の約8割がかかっているといわれる歯周病は、歯を失う原因第一位でもあるお口の病気です。歯周病になると、細菌が歯と歯ぐきに入り込んで炎症を起こし、悪化すると歯の支えとなる顎の骨まで溶かされてしまうため、最悪の場合は歯が抜け落ちてしまうこともあります。
歯周病は「サイレントディシーズ(沈黙の病気)」とも呼ばれ、初期症状がほとんどないことが特徴です。そのため、気づいたときにはかなり進行していることも少なくありません。少しでも違和感を覚えたら、なるべくお早めの受診を心がけましょう。
加齢による自然な変化
年をとると代謝が落ちたり、歯や歯茎へのダメージが蓄積したりすることで、歯肉退縮も起こりやすくなります。
ただし、加齢により歯肉は徐々に退縮し、歯根が露出しやすくなるものの、歯茎は加齢に伴って必ず下がるものではありません。実際、40代や50代の方でも歯茎のラインが正常で、歯をしっかりと守れているケースは珍しくありません。
逆にいうと、20代や30代でもいくつかの理由で歯茎が大きく下がっているケースも見られます。ですから、40代や50代で歯茎の退縮が気になった場合は、加齢以外の原因についても考える必要があるのです。もちろん、加齢という要素も完全に無視することは難しいですが、それだけが原因ではないことを理解しておくことが大切です。

過度なブラッシング(オーバーブラッシング)
「しっかり磨かなきゃ」という思いから、力を入れすぎて歯を磨いていませんか?
必要以上の力を入れて歯磨きをすると、ブラシの圧力や刺激によって歯茎の組織が傷つき、退縮しやすくなります。特に硬い歯ブラシを使用している場合や、横に大きく動かす磨き方をしている場合は要注意です。
適切なブラッシングは、歯茎を守るために非常に重要です。歯ブラシの毛は柔らかく、頭の部分が薄くて小さいものを選び、力を入れ過ぎず、歯間や歯と歯茎の境目まで優しくきちんと磨くことが大切です。
噛み合わせの問題
噛み合わせの悪い場所があると、一部の歯へ極端に負担がかかり、歯茎が後退してしまうことがあります。
また、過去に入れた詰め物や被せ物が合わなくなっている場合も、特定の歯だけに強い力がかかって歯肉退縮を招くことがあります。詰め物・被せ物の不適合は、3~4ヵ月に1回の定期検診を受けていれば、早期に発見できます。
歯茎が下がっている部分にクラウンなどを装着している場合は、一度、歯医者さんで診てもらうことをおすすめします。
生活習慣の影響
歯ぎしり、歯の食いしばり、不十分な口腔ケア、喫煙、睡眠不足、ストレスなども歯茎の後退を引き起こします。
特に歯ぎしりや食いしばりといったブラキシズムは、歯茎が下がる原因となるため要注意です。仕事中だけでなく、睡眠中にも歯ぎしりや食いしばりが認められる場合は、歯茎や顎の骨に相当な負担がかかっています。その影響は40代、50代を迎えると、顕著に見られるようになるでしょう。
歯ぎしり・食いしばりによる悪影響は、歯科医院でのスプリント療法などで取り除けます。気になる方は、ぜひご相談ください。
その他の要因
遺伝的問題、不適切な矯正治療、合わない入れ歯や被せ物、インプラント治療、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、妊娠などによるホルモンバランスの変化なども、歯茎の後退の要因となります。
このように、歯茎が下がる原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っているのです。

歯周病と歯茎の下がりの深い関係
歯茎が下がる主な原因として最も重要なのが歯周病です。
ここでは、歯周病と歯茎の下がりの関係について、さらに詳しく見ていきましょう。
歯周病が歯茎を破壊するメカニズム
歯周病は、歯垢(プラーク)に含まれる歯周病菌が原因で起こります。
お口の中が清潔に保たれていないと、プラーク細菌によって歯ぐきが炎症を起こし、歯肉炎を発症する恐れがあります。そのまま放置しておくと、やがて歯ぐきが後退する場合があります。歯ぐきの後退の原因を特定せず何の対処もしないでいると、歯と歯ぐきが離れて「歯周ポケット」ができ、その隙間にプラークが蓄積するなど、さらに深刻なお口の健康問題に進行する可能性があります。
そして、その歯周ポケットは徐々に深くなり、歯ぐきの後退が進行して、歯がぐらぐらしてきます。
40~50代は歯周病リスクが上昇する年代
40~50代というのは、歯周病リスクが大きく上昇する年代でもあることから、加齢によって歯茎が下がったと勘違いしやすくなっているのです。
実際、40代や50代で歯茎が下がったと感じている場合は、次のような症状が見られないかセルフチェックしてみてください。もしもひとつでも当てはまる症状がある場合は、歯周病が疑われます。
- 歯茎が赤く腫れている
- ブラッシング時に歯茎から出血する
- 口臭が強くなった
- 歯が伸びたように見える(歯肉退縮)
- 歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなった
- 硬い食べ物を噛みにくくなった
- 歯がグラグラと動揺する
- 歯茎から膿が出ている
これらの症状がある場合は、早めに歯科医院を受診することをおすすめします。
歯周病が全身に与える影響
歯周病はお口の中の問題だけではありません。
歯周病菌が口腔内から血管や気管に入り込むと、全身を巡って様々な疾患を引き起こすという研究結果が出ているのです。脳卒中、肺炎、心臓病、糖尿病、低体重児出産・早産などのリスクが高まることが知られています。
このように、歯周病は全身の健康にも大きな影響を及ぼす可能性があるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。

後退した歯茎をもとに戻すことはできる?
多くの方が気になるのが、「下がった歯茎は元に戻るのか?」という点です。
残念ながら、一度後退した歯茎は基本的にもとに戻りません。歯茎の組織は自然に再生しないのです。
歯肉の移植など、外科手術による特別な治療法(遊離歯肉移植術、結合組織移植術、根面被覆術など)はありますが、高額な費用がかかってしまいます。そのため、日々の口腔ケアや定期的な歯科検診と歯石除去により、進行を遅らせることが重要です。
また、前述の通り、歯茎の後退は複合的な要因で発生します。加齢や遺伝的な要因は防ぐことは難しいですが、口腔内の清潔を保ち、間違ったブラッシングを修正し、生活習慣を改善すれば、歯茎の後退の予防につながります。
つまり、「下がってしまった歯茎を元に戻す」のではなく、「これ以上下がらないようにする」ことが現実的な対処法なのです。
歯茎の後退を防ぐための効果的な予防法
歯茎の後退を防ぐには、毎日の適切な口腔ケアが重要です。
歯周病菌や虫歯菌など口腔疾患の原因菌を多く含む歯垢(プラーク)を除去し、歯茎を健康な状態に保ちましょう。ここでは、具体的な予防法をご紹介します。
適切なブラッシングの実践
歯磨きは1日2回以上を目安に行いましょう。
歯ブラシの毛は柔らかく、頭の部分が薄くて小さいものを選び、力を入れ過ぎず、歯間や歯と歯茎の境目まで優しくきちんと磨きます。当院では、お一人おひとりの歯の状態に合わせて、正しいブラッシングの仕方をご指導させていただきます。親御さんには、お子様の歯ブラシの選び方や仕上げ磨きをアドバイスいたします。
定期的な歯科検診とプロフェッショナルケア
定期健診を受けることによって、もしもむし歯や歯周病になってしまった場合でも初期の段階で治療を始められます。
早期発見で痛みも少なく、治療も最小限に抑えられます。当院では定期健診やPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を行うことで、歯の健康管理を徹底してまいります。
PMTCでは、お口のプロである歯科衛生士によるプロフェッショナルクリーニングを行います。毎日のブラッシングだけでは落としきれない汚れや着色を、専門器具を用いて清掃します。

生活習慣の改善
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、スプリント療法などの治療を検討しましょう。
また、喫煙は歯周病のリスクを高めるため、禁煙も重要な予防策です。睡眠不足やストレスも歯茎の健康に悪影響を及ぼすため、規則正しい生活を心がけることも大切です。
噛み合わせのチェック
詰め物・被せ物の不適合や噛み合わせの問題は、定期検診で早期に発見できます。
3~4ヵ月に1回の定期検診を受けることで、これらの問題を早期に発見し、適切な対処ができます。
阪東橋歯科クリニックでの歯周病治療と予防ケア
当院では、日本歯周病学会による歯周病治療ガイドラインに沿った歯周病治療を行います。
患者様お一人おひとりの症状に合わせた治療をご提案させていただきます。
歯周病治療方法のご紹介
ブラッシング指導
はじめに、根本的な原因である歯垢(プラーク)を正しいブラッシングで取り除きます。歯垢はどれだけ歯科医院で綺麗に除去しても、すぐに付着して増えるため、毎日のブラッシングがとても重要です。
スケーリング
「スケーラー」と呼ばれる器具を用いて歯石を取ります。歯石の表面はザラザラしているため、歯垢が付きやすく、落ちにくくもなります。そのため歯石を定期的に除去し、歯垢が付きにくい状況を保つことが大切です。
ルートプレーニング
歯根に付着した歯石や感染したセメント質をスケーラーで削り取り、歯根の表面を綺麗にしていきます。歯根に付着した歯石を綺麗に取り除けば、歯周病の進行の抑制・改善ができます。
歯肉剥離掻把術(FOP)
歯肉剥離掻把術とは、歯根や歯槽骨に付着した歯石を除去する外科手術のことです。重度の歯周病の場合、歯肉の奥に歯石が付着してしまうと通常のスケーリング・ルートプレーニングだけでは落としきれません。その場合はこの歯肉剥離掻把術を行い、悪さをしている組織を取り除き歯周病の改善を図ります。

予防歯科のメリット
予防ケアを定期的に行ったり定期健診で歯の状態を確かめることで、むし歯・歯周病を未然に防ぐことができます。
普段のセルフケアでは落としきれない汚れを歯科医院での予防ケアで落とすことは非常に有効な予防方法です。むし歯や歯周病にかかってしまった場合、数回の通院が必要になることがほとんどです。通院回数が増えることで、それだけ治療費もかかります。年に数回、定期的に予防歯科を受診することでむし歯や歯周病を予防できれば結果的に医療費の節約にも繋がります。
また、定期健診を受けることによって、もしもむし歯や歯周病になってしまった場合でも初期の段階で治療を始められます。早期発見で痛みも少なく、治療も最小限に抑えられます。
まとめ…歯茎の健康を守るために今日からできること
歯茎が下がる原因は、加齢だけではありません。
歯周病、過度なブラッシング、噛み合わせの問題、生活習慣など、様々な要因が複雑に絡み合って起こる現象です。特に歯周病は、歯茎が下がる最も主要な原因であり、日本の成人の約8割がかかっているといわれる身近な病気です。
一度下がってしまった歯茎は、基本的に元には戻りません。だからこそ、予防が何よりも重要なのです。
適切なブラッシング、定期的な歯科検診、生活習慣の改善など、今日からできることはたくさんあります。同じ40代、50代でも日頃から定期検診を受けて、お口の健康に気を遣っている人は、きれいな歯茎を保てていることが多くなっています。
歯茎の状態が気になる方、歯周病の症状に心当たりがある方は、ぜひお早めにご相談ください。当院では、お一人おひとりの症状に合わせた適切な治療と予防ケアをご提供いたします。
小さなお子様からご年配の方まで幅広い世代の方に通っていただける歯医者を目指し、丁寧な対応を心がけています。24時間ネット予約が可能で、初診の方も通院中の方も予約できます。
歯茎の健康は、全身の健康にもつながる大切な要素です。気になる症状がございましたら、お気軽に阪東橋歯科クリニックまでご相談ください。
著者情報
阪東橋歯科クリニック 院長 瀧川 龍一

経歴
・日本大学中学校・高等学校 卒業
・日本大学松戸歯学部 卒業
・日本大学松戸歯学部臨床研修医 修了
・日本大学松戸歯学部顎口腔機能治療学講座 非常勤医員
・横浜市歯科医院にて副院長
・都内歯科医院にて分院長
・厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導医
所属
日本歯科補綴学会
クラ・ゼミ保育園 吉野町 園医
ララランド横浜伊勢佐木 園医









