歯茎から膿が出てきたとき、多くの方は驚き、不安を感じるのではないでしょうか。
膿は単なる一時的な症状ではなく、お口の中で何らかの問題が起きている重要なサインです。
放置すると歯を失う原因になるだけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、歯茎から膿が出る主な原因として考えられる「歯周病」「根尖病巣」「歯根破折」の3つを中心に、それぞれの症状や受診の判断基準、応急処置の方法について詳しく解説します。
歯茎から膿が出る主な3つの原因
歯茎から膿が出る原因は、いくつか考えられます。
最も多いのは歯周病ですが、それ以外にも歯の根の先に膿が溜まる「根尖病巣」、歯の根が割れてしまう「歯根破折」などがあります。
それぞれの原因によって治療法が異なるため、正確な診断が重要です。

原因①:歯周病による膿
歯茎から膿が出る原因として最も多いのが「歯周病」です。
歯周病は、歯と歯茎の隙間である「歯周ポケット」に歯垢(プラーク)が溜まり、細菌感染を起こす病気です。
初期段階では歯茎の腫れや出血が見られる程度ですが、進行すると歯周ポケットが深くなり、内部で細菌が増殖します。
体の免疫細胞である白血球が細菌と戦った結果、その残骸が膿として排出されるのです。
歯周病は「沈黙の病気」とも呼ばれ、初期の自覚症状が乏しいのが特徴です。
膿が出るようになると、すでに「中度歯周炎」以上に進行している可能性が高く、早めの治療が必要です。
日本の成人の約8割が歯周病に罹患しているといわれており、決して他人事ではありません。
原因②:根尖病巣(歯の根の先の膿)
「根尖病巣(こんせんびょうそう)」は、歯の根の先端部分に膿の袋ができる病気です。
虫歯が進行して歯の神経まで達し、神経が死んでしまった歯(失活歯)に起こりやすい症状です。
神経が死んだ後も細菌感染が続くと、歯根の先端に膿が溜まり、やがて歯茎に穴が開いて膿が出てきます。
根尖病巣は痛みを伴わないこともあり、レントゲン検査で初めて発見されるケースも少なくありません。
ただし、膿の袋が大きくなると周囲の骨を圧迫し、腫れや痛みを引き起こすこともあります。
原因③:歯根破折(歯の根が割れている)
「歯根破折(しこんはせつ)」は、歯茎の内部にある歯の根が割れてしまう状態です。
神経を抜いた歯は栄養供給が途絶え、もろくなりやすいため、強い力がかかると割れてしまうことがあります。
歯ぎしりや食いしばり、硬いものを噛む習慣がある方は特に注意が必要です。
歯根が割れると、そこから細菌が侵入し、炎症を起こして膿が出るようになります。歯根破折は外から見えないため、診断にはレントゲンやCT検査が必要です。
割れ方によっては抜歯が必要になることもあります。

歯茎から膿が出たときの症状
歯茎から膿が出ているとき、他にどのような症状が現れるのでしょうか。
膿が出るだけでなく、さまざまな不快な症状が伴うことがあります。これらの症状を知っておくことで、早期発見・早期治療につながります。
歯茎に白いできものがある
鏡で歯茎を見たとき、白いできもののようなものが見えることがあります。
これは「フィステル」と呼ばれるもので、歯茎の内部に溜まった膿の出口です。
白いできものを押すと、そこから膿が出てくることがあります。
フィステルは根尖病巣が原因で形成されることが多く、放置すると繰り返し膿が出続けます。
歯が浮いたような圧迫感
歯茎の内部に膿が溜まると、腫れによって歯が押し上げられるような感覚を覚えることがあります。
「歯が浮いている」「噛み合わせがおかしい」と感じる場合は、歯周病や根尖病巣が進行している可能性があります。
この圧迫感は、膿が排出されると一時的に軽減することもありますが、根本的な治療をしなければ再発します。

強い口臭が発生する
膿には細菌や白血球の死骸、分解されたたんぱく質などが含まれており、強い臭いを発します。
これまでにないような口臭を感じたら、歯茎の中が化膿している可能性があります。
口臭は周囲の人にも気づかれやすく、日常生活にも影響を及ぼします。

噛んだときに痛む
膿が溜まっている部分は炎症を起こしているため、噛んだときに痛みを感じることがあります。
特に根尖病巣や歯根破折が原因の場合、噛む力が歯根に伝わることで強い痛みが生じます。
痛みがあるからといって反対側ばかりで噛むと、噛み合わせのバランスが崩れる原因にもなります。
歯茎から膿が出たときの応急処置
歯茎から膿が出たときは、できるだけ早く歯科医院を受診することが重要です。
しかし、すぐに受診できない場合もあるでしょう。
そのようなときに自宅でできる応急処置をご紹介します。
口内を清潔に保つ
口の中が不衛生だと、細菌がさらに増殖し、症状が悪化してしまいます。
毎日の丁寧な歯磨きを基本として、口内を清潔に保つことが大切です。
やわらかい歯ブラシを使い、患部を刺激しすぎないように優しく磨きましょう。
うがい薬や洗口液を使うのも効果的ですが、アルコール成分が入っているものは歯茎への刺激が強いため、ノンアルコールタイプを選ぶと良いでしょう。

患部を冷やす
歯茎が腫れて熱を持っている場合は、冷やすことで症状が落ち着くことがあります。
ただし、氷を直接口に含んだり、患部に当てたりするのは避けてください。
保冷剤をタオルに巻いて、頬の外側から優しく当てるようにしましょう。
冷やしすぎると血行が悪くなり、治癒が遅れることもあるため、適度な冷却を心がけてください。
痛み止めを服用する
強い痛みがある場合は、市販の鎮痛剤を服用しても構いません。
ただし、痛み止めはあくまで一時的な対症療法であり、根本的な治療にはなりません。
痛みが治まったからといって安心せず、必ず歯科医院を受診してください。
自分で膿を出そうとしない
膿が出ているのを見ると、自分で針などを使って出そうとする方がいますが、これは絶対に避けてください。
細菌がさらに深部に押し込まれたり、新たな感染を引き起こしたりする危険があります。
膿は結果であり、原因ではありません。
原因を取り除かない限り、何度でも膿が溜まる可能性があります。
受診の判断基準とタイミング
歯茎から膿が出たとき、どのタイミングで歯科医院を受診すべきか迷う方も多いでしょう。
基本的には、膿が出た時点で早めに受診することをおすすめします。
特に以下のような症状がある場合は、緊急性が高いため、すぐに受診してください。

すぐに受診すべき症状
激しい痛みがあり、鎮痛剤を飲んでも効かない場合は、感染が広がっている可能性があります。
顔や頬が大きく腫れている、発熱がある、口が開けにくいといった症状も危険信号です。
これらの症状は、感染が顎の骨や顔面の組織にまで広がっていることを示しており、放置すると重症化する恐れがあります。
また、大量の出血が止まらない場合も、すぐに受診してください。
数日以内に受診すべき症状
軽い痛みや違和感がある、歯茎から少量の膿が出る、歯がグラグラするといった症状は、緊急性は低いものの、数日以内に受診することが推奨されます。
これらの症状を放置すると、歯周病や根尖病巣が進行し、最終的には抜歯が必要になることもあります。
早期に治療を受けることで、簡単な処置で済む可能性が高まります。
定期検診の重要性
症状がなくても、定期的に歯科検診を受けることが最も重要です。
歯周病や根尖病巣は、初期段階では自覚症状がほとんどありません。
痛みが出たときには、すでにかなり進行していることが多いのです。
定期検診により、初期の段階で問題を発見し、簡単な処置で済ませることができます。
一般的には、3ヶ月に一度の検診が推奨されています。
歯周病治療と予防の重要性
歯茎から膿が出る原因の多くは歯周病です。
阪東橋歯科クリニックでは、日本歯周病学会のガイドラインに基づいた科学的根拠に沿った治療を行っています。
歯周病は単なるお口の問題ではなく、全身の健康にも深く関わる病気です。
歯周病と全身疾患の関係
歯周病菌が血流に乗って全身に巡ることで、心臓病、脳卒中、糖尿病、肺炎、早産・低体重児出産など、さまざまな全身疾患との関連が指摘されています。
歯周病治療を行うことは、将来の健康リスクを下げることにもつながります。
出典 日本臨床歯周病学会「歯周病が全身に及ぼす影響」 より作成

段階的な歯周病治療
当院では、歯周病の進行度に応じて段階的な治療を行います。
まずはブラッシング指導により、患者さま自身でプラークを取り除けるようにします。
次に、スケーリング・ルートプレーニングによって歯石や感染組織を除去します。
重度の症例には、歯肉剥離掻把術(FOP)などの外科的処置にも対応しています。
歯ぐきの状態、骨の吸収度合い、生活習慣まで総合的に評価し、その方にとって無理のない、現実的な治療計画をご提案します。
予防歯科の大切さ
むし歯や歯周病は、一度治療をしても元の健康な状態に完全に戻るわけではありません。
削る・治す治療を繰り返すほど、歯の寿命は短くなってしまいます。
そのため当院では、「悪くなってから治す」のではなく、「悪くならないように守る」予防歯科を重視しています。
定期健診とPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を中心に、普段の歯磨きでは落としきれない汚れの除去、歯石・着色の除去、フッ素塗布による歯質強化、正しいセルフケア方法の指導を行います。
予防歯科がもたらすメリットとして、むし歯・歯周病の早期発見・早期治療、痛みや治療負担の軽減、通院回数・医療費の抑制、自分の歯で長く食事を楽しめることが挙げられます。
まとめ
歯茎から膿が出る原因として、歯周病、根尖病巣、歯根破折の3つが主に考えられます。
膿は体からの危険信号であり、放置すると歯を失うだけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
応急処置として口内を清潔に保ち、患部を冷やし、痛み止めを服用することはできますが、これらはあくまで一時的な対処法です。
膿が出た場合は、できるだけ早く歯科医院を受診し、原因を突き止めて適切な治療を受けることが重要です。
また、症状がなくても定期的に歯科検診を受けることで、歯周病や根尖病巣を早期に発見し、簡単な処置で済ませることができます。
阪東橋歯科クリニックでは、「今ある歯をできるだけ残すこと」「将来も安心して食事・会話ができること」を目標に、予防歯科と歯周病治療に取り組んでいます。
歯ぐきの腫れや出血、違和感がある方はもちろん、症状がなくても定期的なチェックをおすすめしています。
お口の健康は、全身の健康につながります。
気になる症状がある方は、ぜひお早めにご相談ください。
著者情報
阪東橋歯科クリニック 院長 瀧川 龍一

経歴
・日本大学中学校・高等学校 卒業
・日本大学松戸歯学部 卒業
・日本大学松戸歯学部臨床研修医 修了
・日本大学松戸歯学部顎口腔機能治療学講座 非常勤医員
・横浜市歯科医院にて副院長
・都内歯科医院にて分院長
・厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導医
所属
日本歯科補綴学会
クラ・ゼミ保育園 吉野町 園医
ララランド横浜伊勢佐木 園医









