歯周病と口臭の深い関係
「最近、家族から口臭を指摘された」「人と話すとき、相手の反応が気になる」・・・そんな経験はありませんか。
口臭の原因として、歯磨き不足や胃の不調を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、**口臭の80%以上は口腔内に原因がある**といわれており、その中でも特に多いのが**歯周病による口臭**です。
歯周病は、日本の成人の約8割が罹患しているともいわれる非常に身近な病気です。初期段階では痛みなどの自覚症状がほとんどなく、気づいた時には重症化しているケースも少なくありません。
この記事では、歯周病が口臭を引き起こす科学的なメカニズムと、なぜ自分では気づきにくいのか、その理由について詳しく解説します。揮発性硫黄化合物の発生プロセスから、今日からできる具体的な対策まで、口臭の悩みを根本から解決するための情報をお届けします。
歯周病が口臭を引き起こすメカニズム
歯周病による口臭には、明確な科学的メカニズムがあります。
その中心となるのが、**歯周病菌が産生する「揮発性硫黄化合物(VSC)」**と呼ばれるガスです。
揮発性硫黄化合物(VSC)とは
揮発性硫黄化合物は、口臭の主要な原因物質です。歯周病菌が口腔内のタンパク質を分解する過程で、以下の3種類のガスが発生します。
- 硫化水素・・・腐った卵のようなにおい
- メチルメルカプタン・・・腐ったタマネギや野菜のようなにおい
- ジメチルサルファイド・・・生ゴミのようなにおい
これらのガスが混ざり合うことで、強い口臭が発生します。特に**メチルメルカプタン**は、硫化水素よりも臭いが強く、歯周病が進行するほど濃度が高くなることが知られています。

歯周病菌が発生させるガスの生成プロセス
揮発性硫黄化合物が発生するメカニズムは、以下のような流れになります。
- 口腔内の剥がれた粘膜細胞や食べ物のカスなどのタンパク質を、歯周病菌が分解する
- システインやメチオニンなどの**硫黄を含むアミノ酸**が生成される
- 揮発性硫黄化合物(VSC)が発生する
歯周病になると、歯と歯ぐきの間に「歯周ポケット」と呼ばれる深い溝ができます。この歯周ポケットは、酸素を嫌う嫌気性菌である歯周病菌にとって、格好の住みかとなります。
歯周ポケットが深くなるほど、歯周病菌の敵である酸素が届きにくくなり、歯磨きで汚れを取ることも困難になります。その結果、歯周病菌が活発化し、口臭の原因となるガスも増え、臭いも強くなっていきます。
歯槽膿漏による口臭の悪化
歯周病が進行すると、「歯槽膿漏」と呼ばれる状態になります。
歯槽膿漏では、歯ぐきが炎症を起こし、歯根膜という歯ぐきの奥が破壊されて膿んでしまいます。この**膿み**が、さらに強い悪臭のもとになるのです。
特に、P. gingivalis菌(P.G菌/ポルフィロモナス・ジンジバリス)という歯周病菌は、強烈な臭いをともなうガスを発生させることが知られています。
出典日本臨床歯周病学会「口臭について」より作成
自分では気づきにくい理由とは
口臭は、他人には気になるのに、自分ではなかなか気づけないものです。
なぜでしょうか?
嗅覚疲労(嗅覚順応)のメカニズム
自分の口臭に気づきにくい最大の理由は、**嗅覚疲労(嗅覚順応)**という現象です。
人間の嗅覚は、同じ臭いに長時間さらされると、その臭いに慣れてしまい、感じにくくなる性質があります。自分の口臭は常に自分の鼻の近くに存在するため、脳が「これは危険な臭いではない」と判断し、感知しなくなってしまうのです。
これは、自分の体臭や家の臭いに気づきにくいのと同じメカニズムです。

口腔内の位置関係
口と鼻の位置関係も、自分の口臭に気づきにくい理由の一つです。
口から出る息は、通常、前方に向かって流れます。一方、鼻は口よりも上に位置しているため、自分の口臭を直接嗅ぐことは構造的に難しいのです。
他人は、会話の際に正面から口臭を感じ取りますが、本人はその臭いを直接嗅ぐ機会がほとんどありません。
歯周病の初期症状の乏しさ
歯周病は、初期段階では痛みなどの自覚症状がほとんどありません。
歯ぐきからの出血や軽い腫れがあっても、「歯磨きのせいかな」「疲れているからかな」と見過ごしてしまうことが多いのです。
口臭も同様に、自分では気づきにくいため、歯周病が進行してから初めて家族や友人から指摘されて気づく、というケースが非常に多くなっています。
自分でできる口臭チェック方法
自分の口臭を確認するには、いくつかの方法があります。
コップや袋を使う方法
未使用のコップやビニール袋に息を吹き込んだ直後に、においをかいでチェックする方法です。
一度、深呼吸をしてから、コップや袋の中に息を吐き出し、すぐに鼻を近づけて臭いを確認します。この方法は、自分の口臭を客観的に確認しやすい簡単な方法です。
唾液のにおいをチェックする方法
手を洗って清潔にした状態で、舌の上や歯と歯ぐきの間を指で触り、指先についた唾液のにおいをかいでチェックします。
本来、健康な方の唾液にはほとんどにおいはありません。もし唾液のにおいがあるようであれば、口臭がきつくなっているかもしれません。

デンタルフロスを使う方法
デンタルフロスを使用して歯と歯の間を清掃した後、そのフロスのにおいをかいでみる方法です。
歯周病がある場合、フロスに強い臭いが付着していることがあります。
口臭チェッカーを使う方法
市販の口臭チェッカーを使えば、視覚的に口臭の強さを確認することができます。
数値やレベルで表示されるため、客観的な判断がしやすくなります。
歯科医院での細菌検査
最も正確な方法は、歯科医院で専用の口臭測定器を使って検査してもらうことです。
口臭の原因物質の量や種類を分析し、歯周病の有無も含めて総合的に診断してもらえます。
歯周病による口臭の治し方と予防法
歯周病による口臭は、歯周病治療を行わない限り、根本的になくなることはありません。
ここでは、今日からできる具体的な対策をご紹介します。
毎日の歯磨きをしっかりとする
歯周病予防の基本は、毎日の丁寧な歯磨きです。
歯と歯ぐきの境目を意識して、優しく丁寧に磨くことが大切です。力を入れすぎると、歯ぐきを傷つけてしまうため、軽い力で小刻みに動かすようにしましょう。
また、歯磨きのタイミングは、食後30分以内が理想的です。1日2回以上、できれば毎食後に磨くことをおすすめします。

歯間ブラシやデンタルフロスで歯垢を除去する
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れを完全に取り除くことはできません。
歯間ブラシやデンタルフロスを使って、歯と歯の間に溜まった歯垢をしっかりと除去することが重要です。特に、歯周ポケットに汚れが溜まりやすい方は、毎日のケアに取り入れることをおすすめします。
歯周病予防の歯磨き粉・洗口液を使う
歯周病予防に特化した歯磨き粉や洗口液を使用することも効果的です。
抗菌成分や消炎成分が配合されたものを選ぶと、歯周病菌の増殖を抑え、歯ぐきの炎症を和らげることができます。
定期的に歯のクリーニングを受ける
普段の歯磨きでは落としきれない汚れや歯石は、歯科医院でのプロフェッショナルケアが必要です。
**PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)**では、専用の機器を使って、歯の表面や歯周ポケット内の汚れを徹底的に除去します。定期的に受けることで、むし歯や歯周病の発症リスクを根本から下げることができます。
阪東橋歯科クリニックでは、定期健診とPMTCを中心に、普段の歯磨きでは落としきれない汚れの除去、歯石・着色の除去、フッ素塗布による歯質強化、正しいセルフケア方法の指導を行っています。
歯周病治療を受ける
すでに歯周病が進行している場合は、専門的な歯周病治療が必要です。
阪東橋歯科クリニックでは、日本歯周病学会が示す歯周病治療ガイドラインに基づき、科学的根拠に沿った段階的な治療を実施しています。
- ブラッシング指導による原因除去
- スケーリング・ルートプレーニングによる歯石・感染組織の除去
- 重度症例には歯肉剥離掻把術(FOP)など外科的処置にも対応
歯ぐきの状態、骨の吸収度合い、生活習慣まで総合的に評価し、その方にとって無理のない、現実的な治療計画を提案しています。
歯周病は、お口の中だけの問題ではなく、心臓病、脳卒中、糖尿病、肺炎、早産・低体重児出産など、全身疾患との関連が指摘されています。阪東橋歯科クリニックでは、歯周病治療を全身の健康管理の一環と捉え、将来の健康リスクを見据えた診療を行っています。
出典日本臨床歯周病学会「歯周病が全身に及ぼす影響」より作成

歯周病以外の口臭の原因
口臭の原因は、歯周病だけではありません。
以下のような原因も考えられます。
合っていない詰め物や被せ物
最初はしっかりと接着していた詰め物や被せ物も、経年使用とともに劣化したり、歯ぎしりやくいしばりなどで歯が揺さぶられ、すき間が生じることがあります。
歯に合っていないと、接続部分に汚れやプラークが溜まり、細菌が繁殖して臭いを放つようになります。
お手入れが不十分な入れ歯・義歯
食事が終わってもきちんと手入れをしていない入れ歯は、汚れや細菌の温床になります。
臭いが発生するだけでなく、虫歯や歯周病などのトラブルも招きますので、使用後のお手入れは毎日しっかりと行いましょう。
タバコやコーヒー
タバコに含まれるニコチンやタールが臭いの元になるだけでなく、喫煙によって唾液が減り、口腔内が乾燥することで口臭が強くなる傾向があります。
コーヒーは、舌の表面に残った微粒子とミルクや砂糖が分解された臭気によって口臭を発生させます。
ストレスや口呼吸
ストレスによって自律神経が乱れると、唾液の分泌が減少し、ドライマウスになることがあります。口腔内の乾燥は口臭を強くします。
また、口呼吸をしている人は、お口の中が乾燥し、細菌が繁殖しやすくなるので、悪臭が発生しやすくなります。
まとめ
歯周病による口臭は、揮発性硫黄化合物という特有のガスが原因です。
嗅覚疲労により自分では気づきにくいため、家族や友人からの指摘や、定期的なセルフチェックが重要になります。
毎日の丁寧なセルフケアと、定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアを組み合わせることで、歯周病と口臭を予防し、健康なお口を維持することができます。
阪東橋歯科クリニックでは、「今ある歯をできるだけ残すこと」「将来も安心して食事・会話ができること」を目標に、予防歯科と歯周病治療に取り組んでいます。歯ぐきの腫れや出血、違和感がある方はもちろん、症状がなくても定期的なチェックをおすすめしています。
口臭が気になる方、歯周病が心配な方は、ぜひ一度、阪東橋歯科クリニックにご相談ください。複数の治療選択肢を提示し、患者さまが納得した上で治療を進めることを大切にしています。
あなたの大切な歯と健康を、一緒に守っていきましょう。
著者情報
阪東橋歯科クリニック 院長 瀧川 龍一

経歴
・日本大学中学校・高等学校 卒業
・日本大学松戸歯学部 卒業
・日本大学松戸歯学部臨床研修医 修了
・日本大学松戸歯学部顎口腔機能治療学講座 非常勤医員
・横浜市歯科医院にて副院長
・都内歯科医院にて分院長
・厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導医
所属
日本歯科補綴学会
クラ・ゼミ保育園 吉野町 園医
ララランド横浜伊勢佐木 園医









